【愛犬のムダ吠えのしつけ方】

■Cace1.玄関チャイムで吠える
 玄関チャイムが鳴って吠える理由には、大きく分けて2つ考えられます。ひとつは、「警戒心」が 強くておびえているため、もうひとつはうれしくて「興奮」しているためです。
 家族が帰ってきた時にチャイムを鳴らす習慣がありますか。たいてい誰かが家に居て玄関に鍵がかかっていないので、チャイムが鳴るのはよその人が来た時だけ、という状況になっていませんか。そんな場合、「警戒心」の強い犬は、チャイム=知らない人が来る、と思い込んで吠えることがあります。もしこれに当たるなら、家族がチャイムを鳴らすようにするだけで、チャイム=好きな人が来ると思い、改善されることがあります。
 これに限らず「警戒心」の強い犬の場合、まず、チャイム=いいことがある、と学習させることです。フードを利用し、次の順序で試してみてください。
1フードを食べるのに熱中している時、チャイムを鳴らす。
2ひとりが、フードを見せている時、別の人がチャイムを鳴らし、鳴った直後に与える。
3チャイムを鳴らしてからフードの準備をして与える。
1〜3へとステップアップしていくうち、チャイムが鳴るとフードが出てくる、つまりいいことがあると学習します。これで吠えなくなってきたら、チャイムのたびにフードをあげる必要はありません。
 うれしくて「興奮」するケースでは、エネルギーが有り余っているのかも知れません。運動が足りなくてストレスが溜まっているため、毎日、朝夕たっぷり散歩するようにしただけで改善された犬もいます。性格の強い犬ならふだんの散歩の時、ジェントルリーダーをつけてみるのもいいでしょう。
 チャイムそのものよりも、飼い主の声に興奮している場合もあります。犬が吠え出すと連鎖的に、かん高い声で「もう、うるさい! 静かにしなさい!」などと騒いでいませんか。チャイムが鳴った時には家族が騒がないようにし、静かにしているだけでムダ吠えが減った例もあります。横になってあくびをするなど、ゆったりした気分と空間をつくるように心がけると、犬も落ち着きやすくなります。
 客が家に上がっても吠え続けるケースでは、チャイムが鳴ったらリードを着けて、一緒に玄関先まで出迎えましょう。そして客から先に家の中に入ってもらいます。そうすると、犬は客のほうが優位だと感じるため、おとなしくなる傾向があります。


■Cace2.郵便や新聞配達の人に吠える
 この場合、犬は「入って来るな!」と言っています。相手からやられる前にやってやろうという先制攻撃の状態です。犬の性格にもよりますが、家を守ろうとするのは、犬にとっては自然なことと言えます。
 まず、お宅の犬はいつもどこに居るか考えてください。玄関先が見えるところが犬の居場所になっていませんか。退屈だろうと思い、外がよく見える場所を犬の居場所にしているお宅が案外多いものです。もしそうなら、犬の居場所を配達の人が見えないような場所に移してしまいましょう。たったこれだけで、犬は郵便や新聞配達の人が気にかからなくなり、吠えなくなることがあります。
 それで効果がないようなら、天罰方式を試してみましょう。天罰といっても、犬に危害を加えるわけではありません。吠えた途端に犬が嫌がる音や臭いを発して、ドッキリさせて吠えるのをやめさせる方法です。あらかじめ紅茶の空き缶などに石を詰めたものを用意しておきます。そして吠えた瞬間、落としてみてください。カランカラン!という音にびっくりして吠えるのを一瞬やめてしまうはずです。この時すかさず「えらいね」とたっぷりほめて、吠えることから気をそらします。
 同様に、行ってほしくない場所に立入るとエアスプレーが噴射されるもの(COCOストップ)、吠えると振動したり(ラブリーワン)、犬が嫌う臭いが噴射される首輪(アボアストップ)など、無害な矯正グッズも市販されているので、試しに使ってみるのもいいでしょう。
 また、番犬代わりに飼っているから吠えてもいいけど、なるべくなら数回吠えるだけで止めさせたいという飼い主さんもいます。そんな場合、2、3回吠えたところで「はい、ありがとう」と言ってフードを与えます。「もう興奮しなくてもいいんだよ、わかってるよ」というメッセージを伝えるために、静かに落ち着いた声で言いましょう。


■Cace3.家族が食事中に吠える
 これは一言でいうと要求吠え。優しいお父さんがこっそりと、おいしいおかずをあげたことがあるのかも知れませんね。室内飼いが一般的になって増えた悩みといえますが、ねだられたからといって、犬に人間の食べ物を与えてはいけません。基本的にどんなに欲しがっても無視することです。時々あげると「いいことがあったり、なかったりする」から「いつもいいことがある」「今度こそ!」と思ってパチンコにはまる心理と同じで、いっそう激しく犬が要求し続けるでしょう。
無視するといっても、そばでずっと吠えられたら食べていられないというなら、家族の食事が始まったら、別の場所でフードを与えてみましょう。中におやつを詰めたトリーツホルダーやコングを与えれば時間がかかり、それを噛んでいるだけで満足する場合があります。もし、必要ならリードでつないだり、ケージやサークルを利用し、テーブルのそばに来られないようにしておくのもいいでしょう。
 ドッグフードは嫌で人間の食べるものを欲しがる場合、犬の要求に応えるふりをして、勘違いさせてみるのも一案です。家族の食事中の時、食卓にいつも食べさせているドッグフードをお皿に入れて用意しておき、吠え始めたらそのドッグフードを与えてみてください。何度か繰り返すうち、犬は「なんだ、同じものを食べてるのか。それだったら吠えても仕方ない」と思って、要求をやめてしまうことがあります。
 この方法を応用して、吠えることでは要求は満たされない、ということを覚えさせることもできます。たとえば犬がフードを欲しがって吠えたら、すぐに、「はい、わかったよ!」といってにっこり笑い、トイレをさせようとします。また、遊んで欲しくてボールを持ってきたら「よし、行こうか」と、リードをつけて外へ出してみたり、わざと違ったことをしてみるのです。こうして自分の要求とはまるで違うことをあたかも当然のように数回されると、犬は「ここで吠えると外に出されるかも知れない、それなら吠えないでおこう」と考え、要求が減ってくることでしょう。


■Cace4.電話中に限って吠える
 室内飼いをしていると、電話に関する問題行動もよく見受けられます。吠える理由は、電話がかかってきた時に吠えるのか、かける時に吠えるのかで違っています。かかってきた時に吠えるのは、ケース1の玄関チャイムが鳴ったら吠えるのと同様、音に反応していると考えられ、電話をかける時に吠えるのは「もっと注目して!」という意味だと考えられます。
 まず、電話がかかってきた時に吠えるケースでは、その時の状況を思い起こしてみてください。電話が鳴ったらあなた自身が早く受話器をとろうとして、バタバタと慌てていませんか。そうした飼い主の様子を見て、犬は「大変なことが起こった!」と心配して吠えることがあります。呼び出し音を5つ数えてから出るくらいの余裕を持ちましょう。そして、電話のところまで犬と一緒に行き、あらかじめ電話の横に置いておいたフードを与えてから、出るようにします。そうすると「電話がかかってきたらいいことがある」と犬に覚えさせることができます。
 次に、電話をかける時に吠えるケースでは、吠え始めるのは、受話器を持った時、ダイヤルをプッシュしている時、話し始めた時、のいずれなのかに注目してみましょう。受話器を持った時であれば、ふだんから飼い主が受話器を持ちながら犬に食事を与えたり、「オイデ」「オスワリ」「マテ」などをして、おやつをあげたりします。こうすることで「受話器を持っている時にはいいことがある」と犬に意識付けできるわけです。
 ダイヤルをプッシュしている時に吠え始めるのであれば、直前にフードをぱらっと床にまきます。こうすると犬は本能的にフードを探そうとするので、お皿に入れて与えるよりも時間を稼ぐことができます。(※私は手からフードをちゃんと与えないと犬は落ちてるものをなんでも食べてしまう傾向があるのでこれはお勧めしません)。話し始めた時に吠え出すようなら、おやつを入れたコングやトリーツホルダーを与え、それでひとり遊びをさせてみましょう。もちろん、上手に遊べていたらほめることもお忘れなく。
 このように吠え始めるタイミングに注目するといっても、いつもはっきりしているとは限りません。どの方法が効果的かは犬によっても違うので、これらの方法を組み合わせて色々試してみるといいでしょう。
 また、電話中に限らず、犬が人にかまって欲しくてこうした行動をとるのは、ふだんから犬にかまい過ぎていたり、四六時中べったり一緒にいるせいかも知れません。もし思い当たるなら、犬にひとりでいる時間を与えるようにしてみてください。一緒の布団で寝ているなら、少し離した場所に犬用の寝床をつくってそこに寝かせるようにしてみるのもいいでしょう。そしてひとり遊びをしている時に「えらいね、いい子だね」とほめてあげるようにしましょう。


■Cace5.散歩中、他の犬に吠える
 他の犬に対して吠える理由は、気が強い、逆に気が弱いので他の犬に近くに来てほしくない、一緒に遊びたくて興奮しているなど、さまざまなケースが考えられます。一概にどのケースなのか特定しにくいうえ、どの解決策が効果的かは個体差もあるので、色々な方法を組み合わせて試しながら解消していきましょう。
散歩の途中、犬を飼っている家の前を通ると、お互いに吠えあってしまうような状況はありませんか。相性の悪い犬が居ると分かっていれば、なるべくその家の前を通らないようにし、どうしても通らなくてはいけない時には、その家に近付くにつれ、直進せずに道の反対側に半円を描くように逸れていきます。同時に自分の犬に声をかけ、おやつなどで気を引きながら通り過ぎるとより効果的です。
 他の犬とすれ違う場合には、飼い主が構え過ぎず、スタスタと歩き続けます。この時にリードをクィックィッと引っ張ってはいけません。飼い主がけしかけてるように受け取る犬もいるからです。もし吠えそうになったらすかさず「オスワリ」「フセ」などをさせて気を引き、上手にできたらごほうびを。こうしているうちに相手の犬をやり過ごします。
 気の強い犬なら散歩用のリードをジェントルリーダーに変えてみるのもいいでしょう。頭部がコントロールされ、それだけで吠えるのが軽減される場合もあります。また、ケース2に出てきた天罰を与える手もあります。吠えると振動したり、エアスプレーが噴射される首輪など、市販の商品で試してみるといいでしょう。ただし、この方法で効果てきめんの犬もいますが、臆病な犬には使いすぎると逆効果の場合もあるので注意が必要です。
 他の犬に吠える理由は、根本的には子犬の頃の社会化不足が原因になっていることが多いのです。ワクチン接種が終わった4ヶ月くらいから2、3歳の間にたくさんの犬に会うようにしたいものです。そのためにも1日に最低2回は散歩に出るようにしましょう。また、管理の行き届いた環境で他の犬と交わることができるしつけ教室に通うのもおすすめします。一説には、子犬の社会化には一週間に延べ30頭の犬に出会うのが理想といわれているくらいです。なるべく暮らしの中でいろいろな犬に出会える機会をつくるようにしましょう。
 また、子犬の時からぜひ習慣付けておきたいのが、吠えていない時にこそほめることです。たとえば、子犬と一緒に散歩していると、犬が前方に人や自転車を見つけて、ふっと飼い主を見上げることがあります。その時にすかさず「自転車が来てるね。吠えないで教えてくれたんだね。ありがとう、えらいね」などと言い、言葉やフードでほめます。吠えなかったらほめられることを学習させるのです。
 すでに成犬の犬でもあきらめなくても大丈夫。さきほどジェントルリーダーを着けることをおすすめしましたが、着けた直後はテンションが下がって人間がリードしやすくなり、一時的に成犬でも子犬と同じような性質になります。そこで、あたかも子犬と散歩しているつもりで、一から社会化をやり直してみましょう。



「ドクターズアドバイス ペピイ 2004年秋冬号」
愛犬相談室 ムダ吠え5つのケースを考える より転載







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